レストラン化物堂 ~人と化物の間、取り持ちます~
「第一回! まずはお知り合いになろう大作戦!」
私が堂々と宣言すると、先輩方と兵助さんから微妙な反応が返ってきました。なんですか、皆さん。ノリが悪いですね。
現在位置は、どこにでもあるとある曲がり角。車がギリギリ通れるぐらいの表通りに面する細い道で、そこに私たち四人はぎゅうぎゅう詰めになっているのでした。
「桜子先輩! 車の準備は?」
「できておるぞ」
桜子先輩は手の中で小さなミニカーを転がしてみせました。後ろに引っ張ると走り出すタイプのミニカーです。
「椿屋先輩! クッションの準備は?」
「…………」
椿屋先輩は無言で表通りの方を指さしました。表通りの道端には葉っぱが積まれたクッションが作られています。
「それじゃあ手筈通りに!」
私がパンと手を叩いて号令を取るも、兵助さんは細かく震えて俯いていました。どうやら緊張しているようです。ちなみに兵助さんの見た目はメタモルおしろいによって人間になっています。
桜子先輩は震える兵助さんに近付くと、その両頬を指でつねりました。驚いて顔を上げる兵助さんに、桜子先輩は顔を近づけます。
「よいか兵助。他ならぬわしらが協力しておるのじゃ。貴様は何も怖がる必要はない。ただ堂々としていればよいのじゃ!」
「ふぁ、ふぁいっ!」
ほっぺたをつねられながら、兵助さんはこくこくと頷きました。桜子先輩は「よろしい」と満足げに兵助さんを解放しました。桜子先輩から離れた兵助さんは心なしか先ほどよりも落ち着いて見えます。
「あっ、美奈さんが来ましたよ!」
小声でそう言うと、兵助さんは意を決した表情で表通りへと歩き出ていきました。頑張ってください、兵助さん! タイミングが命ですよ!
兵助さんと美奈さんは向かい合ってどんどん近づいていきます。美奈さんは腕には小さなカバンをぶらさげ、頭には帽子をかぶっていました。あれを利用させていただきましょう。私は人差し指を立てました。
ちょうど二人がすれ違いそうになった瞬間、私はサイコキネシスで風を起こして、美奈さんの帽子を道路側に飛ばしました。
「あっ」
美奈さんは当然その帽子を追って手を伸ばします。次は桜子先輩の出番です。
桜子先輩はミニカーを狐の妖術で本物の車の幻覚に変え、道路に出た美奈さんめがけて走らせたのです。
「えっ」
「危ない!」
兵助さんは声を上げ、美奈さんの腕を掴んで歩道側に引き戻します。二人の体はバランスを崩し、二人は椿屋先輩の積み上げた葉っぱのクッションの上に転んでしまいました。
直後、車の幻影は消え去ります。何が起こったのか理解できていない様子の美奈さんの目の前では、うっかり顔から転んでしまった兵助さんが倒れ伏していました。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
兵助さんががばりと顔を上げて叫ぶのと、美奈さんが兵助さんを案じて叫ぶのは同時でした。あちゃー。ここはかっこよく美奈さんに聞くべきところでしょうに。
すわ失敗かと私たちが物陰から成り行きを見守っていると、美奈さんは兵助さんの顔をじっと見た後、ふふっと噴きだしました。
「ふふっ、ご、ごめんなさい、笑っちゃって」
座り込んだままきょとんとしている兵助さんの顔に、美奈さんは手を伸ばしました。
「顔に葉っぱついてますよ」
これは赤面ものです。もう駄目です。作戦失敗、失敗です!
しかし美奈さんは立ち上がると、地面に座り込む兵助さんに手を差し伸べました。
「私、美奈っていいます。あなたは?」
おや、おやおや? もしかしなくても、これは結果オーライというやつでは?
私が堂々と宣言すると、先輩方と兵助さんから微妙な反応が返ってきました。なんですか、皆さん。ノリが悪いですね。
現在位置は、どこにでもあるとある曲がり角。車がギリギリ通れるぐらいの表通りに面する細い道で、そこに私たち四人はぎゅうぎゅう詰めになっているのでした。
「桜子先輩! 車の準備は?」
「できておるぞ」
桜子先輩は手の中で小さなミニカーを転がしてみせました。後ろに引っ張ると走り出すタイプのミニカーです。
「椿屋先輩! クッションの準備は?」
「…………」
椿屋先輩は無言で表通りの方を指さしました。表通りの道端には葉っぱが積まれたクッションが作られています。
「それじゃあ手筈通りに!」
私がパンと手を叩いて号令を取るも、兵助さんは細かく震えて俯いていました。どうやら緊張しているようです。ちなみに兵助さんの見た目はメタモルおしろいによって人間になっています。
桜子先輩は震える兵助さんに近付くと、その両頬を指でつねりました。驚いて顔を上げる兵助さんに、桜子先輩は顔を近づけます。
「よいか兵助。他ならぬわしらが協力しておるのじゃ。貴様は何も怖がる必要はない。ただ堂々としていればよいのじゃ!」
「ふぁ、ふぁいっ!」
ほっぺたをつねられながら、兵助さんはこくこくと頷きました。桜子先輩は「よろしい」と満足げに兵助さんを解放しました。桜子先輩から離れた兵助さんは心なしか先ほどよりも落ち着いて見えます。
「あっ、美奈さんが来ましたよ!」
小声でそう言うと、兵助さんは意を決した表情で表通りへと歩き出ていきました。頑張ってください、兵助さん! タイミングが命ですよ!
兵助さんと美奈さんは向かい合ってどんどん近づいていきます。美奈さんは腕には小さなカバンをぶらさげ、頭には帽子をかぶっていました。あれを利用させていただきましょう。私は人差し指を立てました。
ちょうど二人がすれ違いそうになった瞬間、私はサイコキネシスで風を起こして、美奈さんの帽子を道路側に飛ばしました。
「あっ」
美奈さんは当然その帽子を追って手を伸ばします。次は桜子先輩の出番です。
桜子先輩はミニカーを狐の妖術で本物の車の幻覚に変え、道路に出た美奈さんめがけて走らせたのです。
「えっ」
「危ない!」
兵助さんは声を上げ、美奈さんの腕を掴んで歩道側に引き戻します。二人の体はバランスを崩し、二人は椿屋先輩の積み上げた葉っぱのクッションの上に転んでしまいました。
直後、車の幻影は消え去ります。何が起こったのか理解できていない様子の美奈さんの目の前では、うっかり顔から転んでしまった兵助さんが倒れ伏していました。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
兵助さんががばりと顔を上げて叫ぶのと、美奈さんが兵助さんを案じて叫ぶのは同時でした。あちゃー。ここはかっこよく美奈さんに聞くべきところでしょうに。
すわ失敗かと私たちが物陰から成り行きを見守っていると、美奈さんは兵助さんの顔をじっと見た後、ふふっと噴きだしました。
「ふふっ、ご、ごめんなさい、笑っちゃって」
座り込んだままきょとんとしている兵助さんの顔に、美奈さんは手を伸ばしました。
「顔に葉っぱついてますよ」
これは赤面ものです。もう駄目です。作戦失敗、失敗です!
しかし美奈さんは立ち上がると、地面に座り込む兵助さんに手を差し伸べました。
「私、美奈っていいます。あなたは?」
おや、おやおや? もしかしなくても、これは結果オーライというやつでは?