結婚適齢期症候群
ようやく昼休みを終えた人事部メンバー達がぞろぞろと戻ってきていた。

「はい。まだいつぞやのお礼もできてないんで、それくらいはさせて頂きます。」

周りに聞こえないように小さな声で答える。

ショウヘイは私の顔を見て、少し口元をゆるめると、

「よかった。まじで助かる。ありがとう。」

と言った。

そんな風に、優しい顔で言われたら、私ますますどうにかなりそうだよ。

これ以上気を持たせたり、気持ちを持ってくような表情作らないでほしい。

オーストリアの時みたいに、何かと私をイライラさせて、ドンと突き離してくれたらいいのに。

「・・・いいえ。」

「じゃ、この後のことはメールで。」

ショウヘイの隣の岩井さんが戻ってきた。さすがにこれ以上詳しい話をここでするわけにはいかなかった。

「はい。」

私はショウヘイにペコリと頭を下げて、自分の席に戻る。

ドクンドクン・・・

心臓だけが別の人格を持っちゃったんじゃないかと思うくらいに激しく踊っていた。

浮かれちゃだめだ。

喜んじゃだめだ。

・・・好きになっちゃだめだ。

必死に自分の心の中で言い聞かせる。

なのに、どうしてこんな風に続いていくの?

私はもう30で、結婚適齢期も危うい年頃で、真面目に結婚相手を探さないといけないんだ。

年齢なんて何?

なんて、マキには言われたけど、マキはマキ、マキのお母さんはマキのお母さん。

私は、私なんだ。

ゆっくりと自分の席に座り、パソコンを開いた。

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