結婚適齢期症候群
開いたと同時にメールを受信する。

きっとショウヘイからだ。

ちらっとショウヘイを見るも、相変わらず涼しい顔でパソコンに向かっていた。

メールをすぐに開く。

やっぱり。

澤村ショウヘイからだった。

『本社ビルの前でタクシーを拾って帰ろうと思う。悪いけど、本社ビルの裏口の方に来てもらえる?誰かに見られると君もまずいだろ?18時に。よろしく。』

ふぅー。

長く息を吐いた。

裏口ね。誰かに見られてまずいのは、ショウヘイでしょう。

そういう言い方されると、少し傷ついた。

でも、そういうショウヘイでないと、自分の気持ちが持たない。

これでいい。

そういう関係だから、私は今日ショウヘイの家に呼ばれたんだ。

何も気を遣わない相手だから・・・。

『了解しました。』

すぐにショウヘイに返信を打った。

妙に時計を見る回数が増える。

でも、見る度に大して時間は進まなかった。

来て欲しい時間なのか、来て欲しくない時間なのか、自分でもわからない。

ただ、ずっと胸が震えていた。

自分の気持ちがこんなにも不安定になるなんてこと今までなかった。

そんな不安定な気持ちを抱えたまま、18時、本社ビルの裏口に到着する。

既に一台のタクシーがビルの前に停まっていた。

このタクシーは、ショウヘイが予約したタクシーなのかな?

そんなことを考えていたら、「お待たせ。」というショウヘイの声が背後から聞こえた。

「タクシー呼んでおいた。さ、乗って。」

ショウヘイが私の肩を軽く叩いた。

一瞬しか触れられていないのに、いつまでもその感触が残っていた。

「はい。」

ショウヘイの促されるまま、タクシーに乗る。



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