結婚適齢期症候群

リビングで上着を脱ぐ。

「適当にかけていいよ。洗面所にハンガーがいくつかあるから。」

「うん、借りるね。」

ハンガーに上着をかけながら、自分のお腹が鳴った。

「夜ご飯どうする？」

洗面所からショウヘイに声をかけた。

「適当に宅配弁当でも注文すればいいんじゃない？」

こりゃまた。

独身男の単純な発想だわ。

きっと、一人でいる時は宅配弁当で済ませてるんだろうね。

そりゃそうか。

仕事で疲れて遅くに帰ってきて、料理なんて作る気はしないもん。

「この近くにスーパーある？」

「え？」

ショウヘイはネクタイをゆるめながら、私の方を見た。

「今から買い物行って作ってくれようとしてるの？」

「うん。まだそんな遅い時間じゃないし。宅配弁当ばっかりじゃおいしくないでしょ。」

「でも、君も疲れてるだろうし大変だろう？構わないさ、宅配で。」

なになに？

私に気を遣ってるの？

それとも、私のお料理が食べたくないとか？？

「こないだの料理、お気に召さなかった？」

さりげなく尋ねる。

「そんなことないよ。おいしかったよ。」

「じゃ、今日は私が作ってあげる。」

「作ってあげる、ね。」

「恩着せがましい言い方するな、なんて思ってる？」

「まぁね。」

ショウヘイはふっと口元を緩めた。

「あと、君は玄関入ってすぐの部屋、好きに使ってくれていいよ。ベッドもあるし。俺はリビングのソファーで寝るから。」

ショウヘイの部屋に私？

「私がリビングで寝るわよ。居候の身だし。」

「俺、リビングの方が何かと動きやすくて便利なんだ。とりわけ松葉杖だし。全然気にしなくていいよ。シーツは一応先週洗ったばかりだから。」

先週って既に一週間経過してるわけで。

でも、ショウヘイのベッドだったら、それくらい全然気にならなかった。

普段は結構潔癖なのにね。

「じゃ、お言葉に甘えて。」

私は今朝実家から持って来た荷物をショウヘイの部屋に運んだ。