結婚適齢期症候群
ショウヘイの松葉杖を突く音が廊下を伝わってくる。

「どうして電気点けないの?」

リビングの電気が明るく照らされた。

私、今どんな顔してるんだろ。

明るく白く光る部屋が、自分の落ち着きをなくしていく。

「電気点けなくてあなたは助かったんじゃないの?」

窓際にうずくまったまま、気づいたらそんなことを言っていた。

「なんだよそれ。」

ショウヘイは前髪を掻き上げながらソファーに腰を下ろした。

「てっきりあなたが先に帰ってると思って、急いで帰ってきたらいないんだもん。」

「ごめん。河村部長に急に呼び出されて。」

「本当に急だったの?」

「そうだよ。帰り際、急に役員室に呼び出されて。」

ショウヘイはため息をつきながら、うずくまっている私を見下ろした。

何の話だったの?

あの親しげにあなたに寄り添ってた女性はもちろん元奥さんよね?

聞きたくないけど聞きたい事がたくさんあった。

でも、こんなこと聞き出したら、私の冷静さが本当に失われてしまいそうだった。

そして、ショウヘイはきっとそんな私を見たらうんざりする。

だってもう既に、困った顔で私を見ているもの。

「君が気に障ったんなら謝るよ。だけそさっきはああ言うしかなかったんだ。」

「・・・私がここにいること、あなたにとって不利益だから?」

ショウヘイの表情が明らかに険しくなった。







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