結婚適齢期症候群
「だけどね。それだけはっきり言われたら、逆に気持ちいいっていうか、すっきりしたわ。先生に言われたの。君みたいにチャーミングな女性は、きっと僕なんかよりかっこいい素敵な男性がお似合いだって。意外と身近にいるかもって言われたわ。」

「ちょっと感動するわね。そんなこと言われたら。」

「うん。先生と別れた後、私にしては珍しくトイレで泣いちゃった。」

「そっか。」

「でね、身近にそんな素敵な男性はいたかどうかずっと考えてたの。」

マキは相変わらず、ポジティブね。切りかえの速さは天下一品だわ。

ほんと羨ましい。

「見つかったの?身近にいる素敵な男性。」

「それがさ。不思議なんだけど、私がトイレで泣いてたら電話がかかってきてね。」

「うん。」

「私の親友と呼ぶにふさわしい男友達のマサキ、覚えてる?」

「ああ、よく二人で飲みに行ってる、2つ上の先輩だよね。」

「そう。そのマサキがね。『お前振られて泣いてんじゃないかって念のため電話した』ですって。」

「何それ。すごいタイミングじゃない。嘘みたい。」

「そうよ、嘘みたいでしょ?マサキには先生のことずっと話してたから今日会う事も知ってたの。振られて泣いてるところまでよく的中したと思わない?」

「マキのこと全部お見通しなんじゃない。それだけ一緒にいて、マキのことわかってくれてるんだわ。」

一瞬間が合って、マキが言った。

「すごく遠回りしたけど、マサキのこと好きかもしれないって。」

?!

また唐突だわね。

「いいの?先生に振られたばっかなんでしょ?」

「先生に言われて気づいたのよ。身近に素敵な男性がいるってこと。あまりにも仲良くなりすぎて気づかなかった。だけど、今チサが言ったみたいに、私のこと、ぜーんぶわかって受け入れくれるのはマサキしかいないって。私にはマサキが一番お似合いだって。」

これだけはっきりと自分の気持ちを言い切ったマキがとても潔くて素敵だと思った。

「また近いうちに飲みにいきましょ。チサには話しておきたいことが結構たくさん溜まってるの。」

「わかった。また相談しよ。」

「うん。ありがと。また連絡するわ。」

マキとの電話が切れた。

また友人が一人、私を置いて一歩前へ進んで行った。


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