結婚適齢期症候群
その時、部屋のドアがノックされた。

「私だけど、･･･入ってもいい？」

ユカの声がした。

「うん。」

「おじゃましまーす。」

ドアを開けると飄々といつものようにユカが入ってきた。

「ねーねー。誰からだった？」

ユカはベッドに座る私の足下に三角座りをした。

「え？マキからよ。知ってるでしょ？会社の同期。」

「なぁんだ。」

「なぁんだって何よ。」

「てっきり男からだと思ったからさ。」

私はフンと鼻で笑った。

「わかるわよ、最近のお姉ちゃんの様子見てたら。好きな人が出来たんだろうなって。」

じっと私の顔を見てくるユカの視線から逃れるべく、ベッドから立ち上がると棚の上にあるスマホの充電器を取り、コンセントに挿した。

「お姉ちゃんすごくいい顔してきれいになったから、今度こそ幸せになってほしいなって思ってたの。」

「お姉ちゃん思いの妹にはいつも感謝してまぁす。」

軽く笑って、ユカの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「友達の家にしばらく泊まるって言ってたけど、本当はその男の家だったんでしょ？」

私は何も言わず、ベッドの下にユカと同じく三角座りをした。

「どうして帰ってきたの？喧嘩でもした？」

「ユカに言う必要ないと思うんだけど。それよかあんたは結婚式の準備や新婚旅行の場所は決まったわけ？」

なんとなくまだユカには今のこの状況を結果として話したくなかった。

「いつもそうやってはぐらかすんだから。私はお姉ちゃんのことずっと見てきて、誰よりもお姉ちゃんのことわかってると思うんだ。いいところも悪いところも。だから、お姉ちゃんが悩んでるなら少しでも力になりたいの。妹としてそばにいられるのもあと少しだし、ね。」

ユカはそう言うと、寂しそうに笑った。
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