結婚適齢期症候群
そんなある日、ずっと連絡がなかったトモエからメールが届いた。

『チサ、元気ですか?ようやくこちらの生活にも慣れてきてメールを打つ余裕も出て来ました。

子供達に算数を教えています。こちらは物もないし、食料も十分ではないし、不衛生だし、日本っていう国はあらためて、幸せに満ち溢れた場所だったんだなぁと実感しています。

でも、こちらの人達のパワーにはいつも圧倒されっぱなしだよ。子供達も本当に勉強熱心なの。

ある意味命がけで勉強しているから、こちらも勉強を教える側だけれど、いつも背筋をピンと伸ばしてもらっています。

いい緊張感の中で、子供達のキラキラした目で見つめられると、私もくだらない悩みが消えて、一生懸命まっすぐに生きようと思わずにいられません。

チサはその後どう?オーストリアの彼とはどうなったのかな?

色々悩むこともあるだろうけど、一生懸命、まっすぐに正直生きて損することは一つもないと思うよ。

どういう結果であれ、得る物のの方が大きいと今私は確信しています。

だから、チサも恐れず自分の気持ちにまっすぐに進んで下さい。 トモエ』

トモエ、がんばってるんだ。

あの時、決意した気持ちは間違ってなかったんだね。

自分もあの日決意したはずだったのに、こんなにも簡単に揺らいであきらめてしまった。

失うことが恐くて、自分の気持ちが前に行かない。

トモエからのメールを何度も読み返した。

ショウヘイの家を飛び出したのは間違いだったのかもしれない。

今更だけど。

迷いに迷って、でもやっぱり戻るべきだったんじゃないかって。

気持ちも宙ぶらりんのまま、ショウヘイの気持ちを確認することもなく、自分の気持ちを伝えることもなく、離れてしまった。
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