結婚適齢期症候群
ぼんやりと頭が冴えないまま、過ごす毎日。

ショウヘイに抱かれた翌朝の眩しい朝の光はもう幻になってしまった。

あんなにキラキラした朝はあれ以来ない。

これからも、きっともうない。

通勤電車に揺られながら、この数ヶ月の自分の変化を回想していた。

時間の流れが一層拍車をかけているような気がする。

夏の後の秋は一瞬で去っていった。

紅葉は赤く染まり、色あせ散っていく。

待ってほしいと何度も思うのに、時間は待ってはくれなかった。

朝、寒くてダウンコートを出した。

靴箱の奥に仕舞ってあったロングブーツも取り出す。

いつの間にか服装は冬の装いだ。

「おはようございまぁす。」

人事部フロアに入ると、ミユキが挨拶をしながらそばに寄ってきた。

ミユキが朝そばに寄ってくる時は、大抵人事部内の新しい動きが見えた時だ。

ミユキは私をお茶室に呼んで、小さな声で教えてくれた。

「チサ先輩、今日面接の準備で８時出勤だったんですけど、澤村さんも早朝から来ていて部長が来るやいなや二人出会議室に入って行ったんです。もうかれこれ１時間近くなるんですけど、まだ二人とも出てこないんですよね。何話してるんでしょ。」

なるべく平静を装いながら、コーヒーを入れた。

「そう。なんだろう。異動かな。」

「チサ先輩もそう思います？私も勘なんですけど、そう思ってて。澤村さんと河村部長って、なんだかいつも折り合いが悪いんですよね。二人で話してても笑顔なんて全くないし、部長もいつも不機嫌で。人事内の噂では、澤村さん、部長のご機嫌損ねてどっか遠いところへ飛ばされちゃうんじゃないかって。」

ショウヘイが再婚を断ったら、それはあり得る話だった。

でも、断る？

営業に戻れるのに？



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