結婚適齢期症候群
カッカカッカしている私をなだめるように、ショウヘイはゆっくりと言った。

「岩村課長も随分飲んでて・・・。俺が会場に到着したときも一瞬理解できてなかったみたいだし。でもすぐに慌てた様子で、部下に料理をお皿に盛らせて僕に「村上さんには今度きちんとお礼するから」って言ってたよ。歓送迎会しきってたし、きっと相当気も使って大変だったんだ。」

そりゃね。

私も不在だったから、その分岩村課長ががんばってくれてたことくらいは理解できるわよ。

だけど、私はここでお腹を空かせて独りぼっちだったんだから。

課長もお酒飲みすぎなのよ。

ビールを飲みながら、心の中でぶつぶつ言っといた。

「わかったわ。そんなことだろうとは思ってたけど。あなたが来なかったら、私ここで一晩中一人だったかもしれないし。」

「そうだね。でも、俺が携帯の充電切らしてたのが一番悪かったんだから、課長は悪くないよ。本当にごめん。さ、食べて。」

彼はそう言いながらお皿を私の前に引き寄せた。

なんだろ。

こんなに優しい言葉をかけてくれたのって初めてじゃない?

彼のスーツが少し疲れてる。

彼の横顔も、今日のトラブル後で心なしか精気がなかった。

いつもと違う様相の彼に、戸惑った。

そして、この広いフロアに今、私達二人きり。

戸惑いながら、不覚にもドキドキしていた。

この狭い空間に二人で肩を並べて立っているのも落ち着かなくて、

「とりあえず、座ろうか。」

と言って、お茶室を出てすぐのフリースペースに置いてあるテーブルの上に料理を持って移動した。

そして、疲れた顔をしているショウヘイのために、わざわざ椅子を引いて「どうぞ」と言ってあげた。

我ながら気が利いてるんじゃない?

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