結婚適齢期症候群
そんな気の利いた私の対応に、彼も一瞬「え?」みたいな顔をしていた。

そして、

「君って意外と気が利くんだ。」

そう言うと、いつものように少し小馬鹿にしたように笑って椅子に座った。

なんだ。

結局いつもと同じ彼だわ。

彼が素直で優しいと感じたのは、一瞬の錯覚。ドキドキして損した。

「お褒め頂きありがとうございますぅ。」

口をとがらせて彼に言い返すと、私も椅子に座った。

そんな私を見ながら、奴はくすくすと笑った。

笑う彼を無視して「いただきます!」と手を合わせた。

お料理は、冷めてたのが残念だけど、どれも最高の味付けだった。

さすが、老舗ホテルのビュッフェは格が違うわ。

相当にお腹が減っていたらしく、彼の前だというのにお箸が止まらなかった。

ふと顔を上げると、彼はコーヒーを飲みながら、私をじっと眺めていた。

何かの動物を観察するかのような口元半笑いの冷静な眼差し。

その目にハッと我に返る。

「ごめんなさい。あなたもどうぞ。少し食べて、私には多すぎるから。」

口にいっぱい頬ばりながらも、彼の方にお皿とお箸を置いた。

「お構いなく。君が食べてるの見てたら俺もお腹いっぱいだよ。全部食べちゃいな。相当空腹だったんだろ。」

彼は足を組み替えると、また静かにコーヒーを飲んだ。

その言い方って、何?

気分悪いんですけど!

私ががっつきすぎだって言いたいの?

そりゃそうよ、あんたを待ってたから今こんなことになってんじゃん。

「じゃ、遠慮なく!」

なんだかむかついて、彼の方に差し出したお皿をまた自分の方に引き戻した。

それを見た奴はまたくすくす笑った。

彼をキッとにらみつけて言った。

「何がおかしいんですか?さっきから。不愉快ですが。」

その途端、彼は声を立てて笑い出した。

「君ってさぁ、オーストリアの時も思ったんだけど、見てて飽きないよね。小動物がせかせか必死に動いてるみたいな感じでさ。ちょっと手を出したら噛みつかれるみたいな勢いがあるし。」

「小動物?」

顔がカッと熱くなる。

ま、また馬鹿にされてる!!



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