届け!私の想い。
「中田先生が話してくれたの。

あの子は、あなたが好きだったの。

あなたは知らなかったでしょうね。」

なんで?どうして、どうして、今なの?

なんでもっと早く言ってくれなかったの?

涙が溢れてくる。目の前が涙で霞んでくる。

吉山先生の顔が見えない。苦しい。

まるで、先生がいなくなったあの時みたい。

つらいよ。今、聞きたくなかった。

後悔しかない。ただただ悔しいだけ。

今まで何度も思った。

手を振ってくれた時、友達なんか置いといて

先生のところに走っていけば良かった。

どうして手を振ってくれたのに、

それが最後だと気付かなかったんだろ。

なんで、何も気づけなかったんだろうって。

「知ってたら、こんなに後悔してません。」

「そうだね。でも、あなた以上に中田先生は

後悔してる。」

「なんで?」

「中田先生が言ってた。

来年はあなたのクラスを持ちたいって。

それだけ気合いが入ってた分、

転勤なんて悲しいに決まってる。

それに、この市じゃないのよ。転勤先。

だから余計に、

離任式なんて行けなかったのよ。

離任式なんか行ったら、もう本当に最後だと

思っちゃうから行かないって。

悲しそうに言ってた。」

私はそれだけ想われてたってこと?

もっと、もっと、早く知りたかった。



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