君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
アルベールの舌が激しくフィーを捕らえ、貪るようにキスを求める。
フィーは密接した体の間に手を割り込ませ、アルベールを無理矢理押しやった。

「アル……ど……して……」
息が上がって、うまく言葉を紡げない。
何事もなかったかのように意地でも平静を保ちたいのに、手の震えや瞳にたたえた涙が動揺をさらけ出してしまう。

「僕を助けてほしい……」
伏し目がちにフィーの横を通り抜け、そのまま去って行く。

どうしてこんなことに。

紳士で優しく、誰もが憧れるアルベール様でいらしたのに。
私が誤解を招くような態度をとっていたのかしら。


『元気になられただけで十分です。なにもいりません』
ついさっき、そう話した同じ口で他の男性とキスを交わしている。

自分が軽薄で淫らな人間に思えた。


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