君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
しかし、フィーの話しが耳に入っていないらしく、ライサは2階の自室へ上がって行った。
フィーの仕事内容などは全く聞こうともしていなかった。
彼女にとって、『教王庁に出入りできる』というのが重要であって、内容の詳細は不要だった。
テーブルには、夕飯の品数に合わないほどのナイフとフォークが並べられていた。注がれることのないワイングラスも空のまま鎮座している。
父親が亡くなり、屋敷を失い、使用人も去っていった。
全てを失った中でこのディナーセットだけが手元に残った。
侯爵家だった頃の遺産。
母親は今もそれを変わらずに使っている。銀磨きで丹精に手入れされているおかげで表面は鏡のように輝き、母親の悲哀を毎日隠さずに写し続けた。
決して愛用しているわけではなかった。
これがきっと母親の矜持なのだろう。
3年前から今もずっと、覚めない悪夢の中で漂流しているのだ。
そこから助け出せるかもしれない。
そんなかすかな希望が、フィーの心に光をともしていた。
フィーの仕事内容などは全く聞こうともしていなかった。
彼女にとって、『教王庁に出入りできる』というのが重要であって、内容の詳細は不要だった。
テーブルには、夕飯の品数に合わないほどのナイフとフォークが並べられていた。注がれることのないワイングラスも空のまま鎮座している。
父親が亡くなり、屋敷を失い、使用人も去っていった。
全てを失った中でこのディナーセットだけが手元に残った。
侯爵家だった頃の遺産。
母親は今もそれを変わらずに使っている。銀磨きで丹精に手入れされているおかげで表面は鏡のように輝き、母親の悲哀を毎日隠さずに写し続けた。
決して愛用しているわけではなかった。
これがきっと母親の矜持なのだろう。
3年前から今もずっと、覚めない悪夢の中で漂流しているのだ。
そこから助け出せるかもしれない。
そんなかすかな希望が、フィーの心に光をともしていた。