君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
フィーもしっかりと同じ洗礼を受け、やっとのことで入館を許された。
母親の善意に感謝しつつもかなりの服や雑品を家に置いてきたのだが、それでもはち切れんばかりのカバンが両腕にぶら下がっていた。
「大司教様の執務室へ行くように」
荷物検査をした兵士からそう指示をされ、休み休みカドラスの執務室へ歩いていると、ちょうどそちらから彼がやって来た。数人の騎士に囲まれ、何やら話をしている。
カドラスもフィーに気付いたらしく、騎士達との会話を中断してフィーに声をかけてきた。
「ちょうどよかった。これから君の部屋を案内しよう」
忙しいからか挨拶などの前置きもなく、突然一人でどんどん先を歩いていく。
「あ、あの、失礼いたします」
物珍しそうな目で見ていた騎士達に頭を下げ、カドラスの後を小走りで追いかける。
ここに慣れるまでしばらくの間は目立たぬよう静かにしているつもりだったのに、作戦は一日ももたずに失敗に終わった。
大司教が廊下を歩くと、他の者は必ず一礼し道を譲った。廊下の中央を堂々と歩く大司教のななめ後ろを、見たこともない娘が巨大なカバンを揺らしながら必死について行く。
『あの娘は何者だ』という好奇心が使用人に湧かないはずがなかった。
母親の善意に感謝しつつもかなりの服や雑品を家に置いてきたのだが、それでもはち切れんばかりのカバンが両腕にぶら下がっていた。
「大司教様の執務室へ行くように」
荷物検査をした兵士からそう指示をされ、休み休みカドラスの執務室へ歩いていると、ちょうどそちらから彼がやって来た。数人の騎士に囲まれ、何やら話をしている。
カドラスもフィーに気付いたらしく、騎士達との会話を中断してフィーに声をかけてきた。
「ちょうどよかった。これから君の部屋を案内しよう」
忙しいからか挨拶などの前置きもなく、突然一人でどんどん先を歩いていく。
「あ、あの、失礼いたします」
物珍しそうな目で見ていた騎士達に頭を下げ、カドラスの後を小走りで追いかける。
ここに慣れるまでしばらくの間は目立たぬよう静かにしているつもりだったのに、作戦は一日ももたずに失敗に終わった。
大司教が廊下を歩くと、他の者は必ず一礼し道を譲った。廊下の中央を堂々と歩く大司教のななめ後ろを、見たこともない娘が巨大なカバンを揺らしながら必死について行く。
『あの娘は何者だ』という好奇心が使用人に湧かないはずがなかった。