君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
話しているうちに、4階から5階への階段を上りきった。正面に昨日見た双頭の龍の紋章が掲げられているドアがあった。
ここが教王の部屋なのだろう。

「では、私はここで失礼する。入って右手奥のドアから隣の部屋へ行ける。そこを使うといい。脱衣所という名目だが、住むには十分だ」
「はい……ありがとうございます」

ドア前に一人残されたフィーは呆然と立っていた。

ここ数日の自分に起こった出来事を反芻してみる。
ただの小娘が犬のお世話役とはいえ教王庁の使用人になり、さらに教王の部屋で寝泊まりをする。
しかも、大の苦手な犬と一緒に。

身に余る光栄やら、身の毛もよだつ恐ろしい事態やら、あれこれごちゃまぜになって嬉しいのか悲しいのかもよくわからない。
それでも、この一歩を進まなければいけない。

フィーは力強くドアノブを押した。
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