君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜

「きゃー！！」
大絶叫が部屋に響く。

レイは前足をフィーの肩にかけ、立ち上がった。二本足で立つと１６０センチのフィーよりも高く、１８０センチはありそうだった。
鼻をクンクンと鳴らし、フィーの頬や首筋の匂いをかんだり、舐めたりしだした。

全身が総毛立った。フィーは硬直して逃げることもできず、されるがままだった。刺激しないように息をする音すら気をつけた。
肉食動物が獲物を捕らえる時のように、喉元をガブリとやられなかっただけマシだったのかもしれない。

身体検査が終わったのか、レイは肩から降りた。敵意を持つわけでも歓待するわけでもなく、ただ興味が失せただけのようだった。
左手奥にあるドアから隣の部屋へ移って行った。

姿が見えなくなった瞬間、フィーは床に転がっている荷物を乱暴に拾い上げた。そして、一直線にカドラスに言われた右手奥のドアに向かって駆け出した。
ドアを乱暴に開けて部屋に飛び込むと、そのまま背中を押し付けてドアを閉めた。

唯一の安全地帯を確保したと思うと、急に力が抜けた。
ふと室内を見ると、淡いピンクの寝具で統一されたベッドが置いてあった。フィーはふらふらと近づいていき、そのまま倒れ込んだ。
深い暗闇に沈んでいくように眠りについた。