君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
男は鼻筋の通った高い鼻でフィーの頬を何度もつついた。
フィーが思わず顔を横にそらすと、今度は無防備になった首をなめ始めた。男の無遠慮な舌が、首から肩まで一気に滑り降りた。
「やっ……やめて」
声を荒げ、抵抗しようとした瞬間、男は悪気のない顔でからかうように笑った。

「どっちの姿でも、結局は怖がるんじゃないか」

思いがけない言葉に、フィーは男の顔を怪訝そうに凝視した。

「……わからない?」
至近距離のまま、男はフィーの反応を待っていた。

黒髪に、同じ色の瞳。
少し野性味がかった雰囲気。
そして、彼の言動。

まさか。そんなことありえない。自分の仮説に自分が信じられなかった。

「わかっただろ?」
フィーの心を見透かしたように、男がフィーの仮説を後押しする。

「……レイ……様?」
言葉にするのも躊躇するほど非現実的な問い。
けれど、男は優しく微笑んだ。

「そうだよ」
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