君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「ただ、救いはある。実は教王はもう一人いるのだ。前教王は、レイ様ともう一人を指名なさった。なぜそうなったのかはわからないが、二人で教王に即位していただくことになる」

犬が教王という時点で、これ以上異常なことはない気がする。二人いようが三人いようが大した問題と思えないほど、犬教王の破壊力はすさまじかった。

「ひとまず、レイ様の件は極秘でいく。今はまだ、『前教王の飼い犬』の立場のままでいい。いつ人間になるのか、自分でコントロールできるのか。わからないことだらけなのでな。人前で突然犬に戻られたら、それこそパニックになるだろう?」
「だから、私をレイ様のお近くにおいたのですか?」
「そうだ。できるだけレイ様と一緒に過ごし、観察してほしい。気づいたことは、どんな小さな内容でもいいから報告するように」

話しを聞いているうちに、この国のためにもなんとかしなければならないと思えてくるから不思議だ。
執務室に駆け込んだ時とは落ち着き具合が全然違った。


「ところで、昨夜、人間になられたのだろう? どうだった? なにかおかしなところはあったか?」
「……おかしなところですか」

舌で舐められた感覚は今も生々しく首に残っている。顔が火照るのがわかったが、とてもじゃないが報告する気になれなかった。

フィーは一礼し、部屋を出た。
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