君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「なにか困ったことがあったら、ぼくも力になるよ。カドラス様はなにかとお忙しいし、手が回らないかもしれないから」
正面から真摯に見つめてくるアルベールの瞳に囚われそうになる。

再会できて、本当によかった。
なにかしてくださらなくていい。
こうしてそばで話しができるだけでいい。

いつまでもこうしていたいが、フィーにもやることがあった。あるからこそ離れられる。そうじゃなければふん切りがつかないところだった。

「近いうちに、またここでお会いできたら嬉しいのですが」
フィーなりの精一杯の意表示だった。

本当は、明日もあさっても会いたい。
でも、自分の口からはとてもじゃないがそんなこと言えなかった。

それに、騎士は訓練や遠征で予定が不規則だ。多忙な身でもある。わがままを言ってはいけない。分別が言葉を押し止めた。

アルベールは全てを包み込むような笑顔で答えた。
「ぼくが君に会いに来るよ」

その言葉を受け止めて、うまく返せるほどフィーの経験値は高くなかった。恥ずかしさで動かない口からなんとか言葉を吐いた。

「……そんな言い方、ずるいです」
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