君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「レイ様。まだしばらくはその姿でいらっしゃいますか? カドラス様をここへお呼びした方がいいかと。いろいろと大切なお話があるかと思いますが」
「じゃあ、今から行こうか」
「いえ、レイ様はこちらでお待ちいただけますか? 私が呼んで参ります」

なにが起こるかわからない。レイをなるべく人目にさらさない方がいいと思った。

「レイ様は服をお召しになっていてください。すぐに戻って参ります」

フィーは急いでカドラスの執務室ヘ向かった。
いつ犬に戻るのか、そして次にいつ人になるのかもわからない。貴重な機会だった。

廊下を急いでいる途中、向こう側からアルベールが歩いて来るのが見えた。
今朝の余韻にまた熱が帯びる。

「ずいぶん急いでいるようだけど、カドラス様のところへ?」
「はい。急用でして」

アルベールの近くに立ち、顔を見て、話しをする。
それだけで、こんなにも気持ちが浮き立ち、満たされるものなのか。
自分に自分が驚かせれる。

「じゃあ、武器庫に行かなくちゃ。カドラス様はそちらにいらっしゃるよ。ぼくが案内するよ」

アルベールが先を歩き出した。


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