君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「ねえ、フィー。お願いがあるんだけど」
アルベールが唐突に切り出した。
「今度、時間がある時にカドラス様に自己紹介させてもらえないかな」
「……自己紹介?」
アルベールの意図がよくわからない。

「これからはもっと、フィーと二人でいる時間が長くなると思うんだ。そうすると必然的にカドラス様と顔を合わせる機会も多くなるだろう? だから、きちんとご挨拶くらいはしたいんだ」

礼儀を重んじるアルベールらしい申し出だった。
そして何よりも、頬が緩んでしまうような事を自然と、それが当然といったように織り交ぜて話してくれるのが嬉しかった。

「わかりました。お願いしてみます」
「ありがとう」

断られると思っていたのか、アルベールはホッとしたような表情で微笑んだ。

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