君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「どうしてここに……?」
一番の疑問をおそるおそる尋ねてみた。

「おまえの匂いをたどってきたんだよ」

『なぜ』ここにいるのかを聞いたのに、レイは、『どうやって』ここに来たのかを質問されたと思ったらしい。

色々な意味で問題のある発言だが、本人は全く気づいていない。

「毎日嗅いでるから、おまえの匂いはもう嫌でも覚えた」
「そ、そんな言い方……」
恥ずかしさで動揺してしまう。


『においを嗅ぐ』

この言葉がこんなに卑猥な響きを持っているとは、この瞬間まで知らなかった。しかも、毎日ときた。一体何をしているのか。変な妄想をかき立てる言葉だ。
それをよりにもよって、アルベールの前で言われるなんて。

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