君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「私はただ教王様を全力でお支えしただけです。それはあなた様に対しても同じこと」

カドラスの言葉にレイは鼻を鳴らした。

「じゃあ、おれには体のご奉仕はいらないからな。オスに興味はない」
「レイ様! 邪推はおやめください」

一難去ってまた一難というやつだ。
今度はレイとカドラスが一戦交えている。

「立場をはき違えるなよ、カドラス。おれをいつまで、『アデラの飼い犬』だと思っている?」
「……申し訳……ございません」

抑えているのだろうが、カドラスの顔が屈辱に満ちていくのがわかった。

「早く、彼らに親書を届けるんだな。じゃないと、明日にでも教王だと名乗り出るぞ」
「しかし……」
「お行儀よくするから安心しろ。なんなら尻尾だってふってやる」

話しの半分も理解できなかったが、レイが圧勝したのはわかった。
普段はボール遊びが好きな普通の犬なのに、人間の彼はこうも堂々として頼もしい存在になるのか。

犬教王だとしても、立派に務められるかもしれない。

カドラスと対等、もしくはそれ以上に渡り合っている姿を見て、フィーは安堵と尊敬の念を感じていた。

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