君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「ありがとう、フィー。そう言ってもらえてすごく嬉しいよ」
アルベールがフィーの右手を強く握ってきた。

アルベールの大きく力強い手。
触れられている右手にすべての神経が集まって、熱を帯びていくようだった。すっぽりと包み込まれた手から自分の気持ちが伝わっていくような気がして、フィーはどぎまぎしていた。


「ところで、フィー」
急に、アルベールの表情が真面目になった。仕事の顔だ。

「今日、ここに誰か来るっていう話しをカドラス様から聞かなかった?」
「え?……いえ、特には」
「今朝から急に庁内の警備が厳しくなってね。不審物がないか見回ったり、訪問者の身体検査も強化されてるんだ」

昨日のレイとカドラスの一件が関係しているのだろうか。

「突然そんな指示が出るなんて珍しいんだ。偉い方がいらっしゃるのは間違いないんだけど。そんな方が前触れなくお忍びで訪問されるなんて、考えられないんだけどね」

結局、疑問が解決されないままだったが、アルベールは仕事へ戻っていった。総動員で事に当たっているようだった。

フィーも急いでレイの元へ戻った。
< 44 / 122 >

この作品をシェア

pagetop