君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
『エリーサ』

確かにそう言った。
その名に、フィーの鼓動は早くなった。
現国王の第二子と同じ名だった。

結婚後もイルタ王宮で暮らし、高齢の父王の補佐をしながら政治に関わっていると聞いた事があるが、その『エリーサ王女』だろうか。年齢はたしか40歳ほどだ。

「あっ……んー、レイ!!」

悲鳴のような叫び声で、生々しい現場に引き戻される。

「……向こうの部屋にワインを準備してあります。少し休憩されませんか?」
「いいわね。でも、これで終わりじゃないわよ」
「もちろんですよ」
レイがからかうような口調で答える。

「もうこの部屋には来なくていいですよね?」
レイが少し大きめな声で念を押している。

自分へのメッセージだろうか。もう安心していいと伝えてくれたような気がした。


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