君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「フィー・アッバスか!?」
「はっ……はい!」
急に名を呼ばれ、思わず大声で返事をする。

声の主を探そうと玉座を見ると、いつの間にかわきに男が立っていた。
玉座が床より数段高い位置にあったため、フィーは見上げる状態だった。

考え事をしていて気付かなかったのか、彼が気配を消す達人なのか、とにかく、黒い礼服を着た初老の男がこちらを見ていた。

「私はカドラス・ソーシアス。君に手紙を出した者だ」

いたずらじゃなかった!

全身の力が抜ける気がした。
用件どうこうより、まずはそこが肝心だった。

謎の手紙に呼び出されたとはいえ、一市民が謁見の間に入り込んだとなったら、ただの不法侵入ではすまない気がした。

ある事ない事、あれこれ噂になるだろう。好奇や同情の目にさらされるのはもう充分だった。
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