君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「レ……レイ様!?」
フィーの動揺を完全に無視し、今度は反対の頬に口づける。

「な……なにを……」
「涙」
「……え?」
「泣いてる」
レイの言葉に、初めて自分が泣いている事に気付いた。

悲しいからなのか、自分に腹が立っているからなのか、自分でもよくわからなかった。

「ほら、また」
そう言うと、まぶたに唇を落とした。
彼なりに涙を拭ってくれたのだろう。

「レイ様。もう大丈夫です。ありがとうございます」

無邪気な犬が、愛情表現としてなめてくれる。陽だまりのような温かさだった。


「ねぇ、フィー。一つ聞いていい?」
少し緊張したような、こわばったような声だった。
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