君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
唐突な厳しい雰囲気に、フィーにも緊張が走る。
今までに見たことがない苦しそうな表情で、その一言を絞り出すのにすごく躊躇しているようだった。

「……恨んでる? その犬のこと」
「え?」
「飛び出してさえこなかったら、こんなことにはならなかっただろ? 人生を狂わされて、憎んでるんじゃないかと」

憎む? 犬を?
そんな質問、されたことがなかった。

改めてあの時の自分を振り返ってみる。

「そんな風に考えたことはありません。確かに、ほんの少しでもタイミングがずれていれば……と思ったこともあります。でも、これは本当に不運な事故で。犬を憎んでもしょうがないことです」
「そうか……ありがとう」
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