君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「時間がないので要点だけ話そう。明日からここに住み、とあるお方のお世話をしてほしい」

「……はい?」

要約しすぎて説明になっていなかった。何を言っているのかさっぱり理解できない。
フィーの反応を見て、カドラスは若干いらついたようだった。

「言葉の通りだ。こちらはもうそなたの部屋の準備をしてある。これから家に帰って荷物をまとめ、明日から来られるのかを聞いている」

とてもじゃないが、質問も拒否することもできるような雰囲気ではなかった。

「は、はい。明日からこちらでお世話になります……」

「そうか、それはよかった。母君もきっとお喜びになるだろう。教王庁に部屋が持てるなど、名誉な事だからな」


この人は全てを知っている。

フィーの心に一滴の黒い雫が垂らされたようだった。それが滲み広がって、気持ちを重く染めていくようだった。
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