君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「あいつ、元は王宮にいたこと知ってる? 今と同じ騎士見習いで」
「はい」
「だけど、一年半前にそこを辞めて、こっちにうつってきたんだ」
「そうなんですか?」

アルベールから詳しい経緯を聞いたことはなかった。彼がつぐんでいた内容をこのまま他の人から聞いていいものなのか、躊躇する気持ちもあった。

「出世できないと見限ったんだよ」
「そんなことは……」
「あいつは、男爵家の次男だろ?」


『アルベール様は、男爵家の次男なんですよ』
頭の中で、母親の声が響く。

「王宮ってのはここよりずっと保守的なところだ。出世するには家柄が重要だ。その点でやつに希望はない。功績を上げればその限りじゃないけど、国のために命をかけるような男じゃないだろ?」


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