君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「害が出る前に、今すぐあいつを教王庁(ここ)から追放してもいいんだけど」
口調は優しいが、目は獲物を仕留める時のそれに似ていた。

怖い。

レイのことを初めてそう感じた。

教王の前では私達はただの紙切れなのだ。あらゆる与奪権を持つ教王の一言で全てが吹き飛ばされてしまう。

「アルベール様はお優しい方です。直接お話しをされたら、きっと印象が変わると思います」
なんとかチゃンスがほしかった。

「そこまで守ろうとする価値はないと思うけど」
「昔からアルベール様は誰に対しても平等に接していました。計算高い方とは思えないんです」
「……っぱり……だ……か……」
レイが何かをつぶやいた。

「いいよ、わかった。今度、直接話してみるよ」
呆れたのか諦めたのか、レイはぞんざいな態度でこの議論を終わらせた。

いちるの望みがつながったと思いたかった。
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