君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜

「う……ぐ……」
低くこもった声に、絨毯をひっかくようなガリガリという音。獣の唸り声のようなものも聞こえる。

嫌な空気だった。
本能に身が急き立てられた。
ノックもせずに、レイの部屋に飛び込む。

「レイ様！？」

そこには、犬の姿で床に転がり暴れているレイがいた。息は荒く、足を激しくばたつかせている。何度か嘔吐したらしく、口に残留物もついていた。

「どうなさったんですか！？　しっかりなさってください！　今すぐお医者様を……」
そこまで言って、言葉に詰まる。
人間のお医者？　獣医師？

騒ぎを大きくするわけにもいかない。水面下で動かなければ。外の番兵にも気づかれてはいけない。

まずは、カドラス様のご指示を仰がなければ。