あぁ、ちょっとまって
タイトル未編集
エピソード1
例えば、人生で一度過去に戻れるのなら。
私は迷わずあの日に戻る。
何もできずに棒になった脚を、無理やり動かして
貴方のもとに走って向かう。
貴方のちょっと古めかしい香りとエタノール臭が入り混じった、薄暗いあの教室に。
あの、理科室に。
そうして私は、迷わずこう言うんだ。
「ずっとずっと好きでした。」
そしたら今はもう少し変わっていたのかもしれない。いや変わっていないかもしれないけど。
けど、少なくとも。こんな想いなんかせずに。こんな冷たい雨が降りしきる6月に。
貴方の遺影なんか、見なくて済んだのかもしれない。
ただ、今の私ができること。
痙攣する唇をなんとか開いて、吐き出すようにつぶやく
あぁ、ちょっとまって