あずゆづ。2
「よ、よし…!!」
私はまな板に横になっているにんじんと包丁とを交互に見ては、再度気合いを入れる。
…という動作をもう何度繰り返したろうか。
「無理ならあっちで「や、やります!!!」
降板の声をかけられる前に、私は包丁を手に取った。
皮はゆづくんが向いてくれた。
切るだけ。
食べやすい大きさに切るだけ。
そう言い聞かせて右手に包丁を持ち
左手でにんじんを持つと。
隣で腕組みをしながらじっと見つめていたゆづくんがため息をついた。
「そんなんじゃ指切るぞ」
「ほえ」
「猫の手しろ、猫の手」
「猫の手…?」
そういえば小さい頃お母さんにも同じこと言われたような気が…。
首を傾げた私を見て、ゆづくんが右手を丸めて手首をくっと曲げて見せた。