あずゆづ。2
「なんでそんなに遠くに座っちゃうの~?」
猫なで声で続けるそいつは、
肩まである髪を耳にかけ、
濃い化粧をしているにも関わらず
小さな手鏡で自分の顔の確認をしていた。
名前は、知らない。
「寂しいなあ…? ゆ・づ・くん」
「!!」
イラッと、きた。
そう、呼んでいいのは。
……お前じゃない。
「その名前で呼ぶな、死ね」
「だってこうしないと優樹くんこっち見てくれないんだもん」
くすくすとおかしそうに笑うそいつに
俺は危うくぶん殴りそうになる衝動を
必死で抑えた。