あずゆづ。2
***
梓side

「はあ…はあ…っ!!!」


どれだけゆっくり呼吸をしようとしても

なかなか整わなくて苦しくなって

自然と涙が溢れてきて。


ひゅうと吹いた風が涙の跡を撫でて

余計に冷たく感じた。


屋上からは、ゆづくんと二人で昼休みに過ごす大きな木が見えて。


あの頃を思い出して、自然と口角が上がった。


『ゆづ』


女の人の声だった。

甘ったるい声だった。


信じられなかったけど、後から小さくゆづくんの声が聞こえた。


ねえ、あんなところで二人で何してたの?

鍵までかけて…。


ゆづくん、私の声色気ないって笑うよね?

あんな声を出す人が好きなの?


次々と嫌な自分が顔を出す。


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