いじめっ子には愛の鉄槌を
「桃華もとうとう社会人だね」
お母さんがしみじみと言う。
「明日からひとり暮らし大丈夫かな?」
「大丈夫だ。
桃華はお父さんお母さんの子供とは思えないほど、よく出来た娘だから」
お父さんはそんなことを言ってくれたけど、ここまでぬくぬくと実家で育ってきたあたしが、よく出来た娘だなんて到底思えない。
ただ、生まれつき頭が良かっただけ。
それ以外、何の取り柄もなかった。
料理好きのお父さんが作ったご飯を食べて、お母さんとお話しして、暇な時間は本を読む。
彼氏なんていたこともないし、羽目を外したなんて経験もない。
良くも悪くも温室育ちなのだ。
こんなあたしがいきなりひとり暮らしをして大丈夫なのかと不安に思う。
だが、このまま快適な実家にいると一生恋なんて出来ないと思い、思い切ってひとり暮らしを始めることにしたのだ。