きみいろ~そして二人は恋をする~
「・・・私が受けた命令は、医師を王宮へ連れて行くことです。そして、工房の状況を見る限り、あなたは一人で工房を運営し、一人で実績を積んできた一人の医師、薬剤師であると推測します。」

真っ直ぐな瞳で、真っ直ぐな言葉で語られる。
目の前にいる人は必死で言葉を紡いでいるように見えた。

「人の命が関わることなのだから、その背に背負うものは小さくありません。だからこそ、貴方は知識と技量を研鑽し、覚悟を持って取り組まれてきたのではと思います。この工房にファルカス殿は確かにいない。でもここに来る方はファルカス殿ではなく、貴方を頼ってここに来ているのでないかと思うのです。貴方はもうここで一人の医師、薬剤師として立派に歩まれていると・・・思うのです。」

胸に付き刺さりつつも、その言葉はユリアに心地いい響きをもたらしていた。
そしてそれは、とても不思議な感覚でもあったのだ。

彼はユリアに王宮から届けれられた書簡を差し出し、こう言った。。

『―――――私は貴方という可能性を信じてみたい。』

真っ直ぐな瞳で、はっきりとした口調で言い放たれた言葉は、ユリアの中に強い光をもたらした。
そしてその光は輝きをまし、次第に熱を帯びていくようにも感じた。
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