きみいろ~そして二人は恋をする~
2. 当たり前の日常の崩壊

「アステリア王国のとある方の依頼で参った。医師ファルカス殿はご在宅か!」
 
真夜中のアステル王国の下町、ユリアの薬剤工房に、見慣れぬ人が現れた。。
工房の入り口をノックする音と、外からなにやら叫ぶ声が聞こえている・・・。

ユリアはその騒動で目を覚ました。

部屋のなかはまだ暗い。
窓の外には月明かりが差し込んでいた。

(まだ真夜中じゃない・・・。)

予想外の来客に、せっかくの眠りを邪魔され、ユリアは少々不機嫌な気分になってしまった。

突然の客で、しかも真夜中の訪問で・・・。常識はずれな時間の訪問といってもいい。
ドアを叩く音は、づづいている。周囲の住民も騒ぎで目を覚ましたかもしれない・・・。

ユリアは、ため息を付き、ベッドの脇においてあったランプに明かりをつけた。
本当は着替えたいが、客人を待たせるわけにも行かない・・・。

白のワンピース型のパジャマの上に、茶色のストールを肩にかけ・・・。
ユリアは寝室から、工房の入り口へ向かった。

病人は待ってくれない。
昼も夜も、具合の悪い人はいる。

工房の近くには、狭くて、ぼろいながらも一応治療院があり、急患が出たり、手が足りないと、助っ人を頼まれたりすることもあれば、処方薬の調合を頼まれることはある。

そんな時にはたいてい夕方に治療院から連絡がはいるものだけど・・・、そんな話もなかったし・・・。

ということは、治療関係ではない・・?

こんなにけたたましくドアをノックされるのは初めての事だ・・・・。

尋常にない状況がどこかで起きているということなのだろうか?。
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