ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
彼らは何処にでも居るような、初めから普通の幸せを手にして生まれてきた人間。

そんな彼らと今のあたし達は、きっと生きる世界が違う人間。

傷付けたくないと思えば思うほど、知らず知らずに傷つけあってしまう。

なんて、残酷な世界だろう。


「玲!!」


いつの間にか、聞きなれた声。

その声の主が、慌てたようにこちらへと近付いてくる。


「大丈夫なの?」


心底心配している声色で、問い掛けてくる。


「うん。大丈夫。ごめんなさい、心配掛けて」


身体に染み付いた、言葉遣い。

今じゃ無理をしなくても、簡単に演じられる。


「帰ってこないし、お父さんと凄く心配したのよ」

「本当にごめんなさい」

「おばさん。俺がついてのに、すいません」


晃一が、お母さんに頭を下げる。

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