ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「イチが生きてた世界を、少しだけ生きてみた(見てきた)」

「そう。いい人たちだったでしょ?残酷すぎるほど」


彼らが残酷だったのか、あたし達が彼らをそうさせてしまったのかわからない。

だけど彼らと過ごす時間は、あたし達には酷過ぎた。


「今でも、彼らはひかりを求めてる」

「そっか。普通なら、嬉しいことなのにね。なのに、全然喜べないや」


切なそうに、イチは顔を歪める。


「後悔、してるんでしょ?」

「後悔なら、毎日してた。みんなと出会った日から、ずっと」


イチは、グッと唇を噛み締めた。


「みんなと離れてから、ずっと考えてた。イチと一緒にいる人生と、みんなと出会えた人生。どちらが幸せな人生なんだろうって」


遠くを見つめるイチの瞳には、何が写っているのだろう。

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