ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「選べた?」


あたしの問いに、イチは首を横に振る。


「選べなかった。でも、あたしはひかりじゃない。ひかりには、なれない。なりたくない」


アイツらは、似ているイチを身代わりにした。

死んだ、人間の身代わりに···

そして、イチを傷つけた。


「あたしは、イチ。だから全部リセットして、彩華(さいか)として、もう一度生まれ変わる」


名もなかったあたし達には、保護された施設の人が付けてくれた彩華と聖華(せいか)と言う、もう一つの名がある。


「あの時は、大人たちの都合の振り回された。だから今度は・・・あたしが自分の権利を利用する」

「良いの?あの人たちとは、確実に縁は切れる。だけど5年は自由を奪われ、イチの人生に制約がつく」


5年は遠くの系列の施設に保護され、この街に戻ることさえ許されない。

その間にひかりと言う人間は抹消され、彩華と言う人間が新たに作り出される。

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