ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「嘘じゃない。受け止めろ」


千郷は声を上げ、泣き崩れる。


「嘘じゃねぇなら、死因は何なんだよ」

「自殺だ」


晃一の言葉に、おじさんは淡々と答えた。

そしてその言葉を最後に、誰も何も聞き返すことはなかった。


「刑事として、普通の人よりは沢山の人間の死に直面してきた。その中でも自ら命を絶つ行為は、残された人間の心を抉る。親しければ親しいほど、その傷もまた深い」


おじさんの言葉に、胸がチクリと痛む。


「岩崎彩華と岩崎聖華と言う人間は、何の罪もない被害者で、一番の犠牲者だ。そんな彼女たちは、人よりも沢山辛い経験をしたことだろう。だが、一度もなかったのだろうか?彼女たちが幸せを実感する時は。もし岩崎彩華の人生がそうだったと言うのなら、誰も彼女を責められない」

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