ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「あぁ~、腹減った。早く、飯行こッ」


流れるように手を握り、あたしの手を引いてハルは歩き出す。

昔のような、見えない壁はなくなった。

だけど、そのせいでハルとの距離感がわからなくなった。

進んでいる時間よりも、あたしの人生は立ち止まる時間の方が長い。

約束の5年が過ぎてからの、この2年。

何処に向かえばいいのか、わからなくなってしまった。

彩華に会えない現実に、独り焦っていた。

次の日、昨日と何ら変わらない今日が始まる。

淡々と仕事をこなし、流れる時間に身を委ねる。


「お願いします」


窓口から聞こえて来た声に、時が止まったような気がした。


「お掛けになって、お待ちください」


窓口職員の言葉のせいで、先程の声の主はこちらに背を向ける。

おかげで、顔が見えない。

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