ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
一瞬だったのか、それとも数分だったのか?

よくわからないが、懐かしい2人だけの空気が流れた。


「蓮見、さん」


あたしが首から掛けていたネームプレートを、相手が読み上げる。


「あの、下の名前聞いてもいいですか?」

「・・・あ。蓮見、玲です」

「玲、さん」


少しだけ口元を緩め、懐かしそうな顔を浮かべる。


「すいません。もう1つ、聞いても良いですか?近くに、カフェってありますか?」

「南口に出入り口を出て、すぐのところにありますよ」

「そうですか。ありがとうございます。夜にでも、行ってみますね」


そう言って、岩崎彩花はその場を後にした。

遠ざかる岩崎彩花の背中に、走り出しそうになる。

そんな自分を必死に堪え、再び仕事へと戻った。

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