ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
タクはそんなあたしの手を掴み、自分の方へと引き寄せる。

あたしとタクの間には、カウンターがある為、そう距離が近づいたわけではない。

強いて言うのであれば、タクの声が聞きやすくなった程度だ。


「蓮見ちゃん、気を付けなよ?」

「え?」

「俺が守れる範囲は、この箱の中だけ。だから、ここに居る人とあまり仲良くならない方が良い。あいつら、ともね?」


意味深な言葉を告げると、タクはあたしから手を離した。


「あいつら、って?」

「もう少ししたら、出てくるよ」


タクは、晃一が消えて行った階段へと視線を移す。

だから、あたしも階段を見据える。

あの階段の上に、誰が居るのだろうか?

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