ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
千郷は空を見上げ、小さなため息をつく。


「ここにひかりも居たら、きっともっと楽しいんだろうな」


独り言のように、千郷は呟く。


「きっと、蓮見でも仲良くなれたと思う。ひかりは良い子だったから」


そう言い、今度はあたしに切なそうな笑みを向けた。


「ひかり?」

「お昼に、阿須賀が言ってた子。壱哉の彼女で、あたしも結構仲良かったんだぁ」


へぇ。

別に、興味ないけど・・・


「でも、居なくなっちゃった」


悲しそうな顔色を浮かべる千郷に、なぜか複雑な感情が生まれた。


「あれが、最後になるなんて思わなかった」


もう会えない。とでも言う千郷の口振りに、彼女は死んだのだとあたしは勝手に解釈した。

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