ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「本当に、違うから」


あたしの耳元で、千郷が言う。


「タクが、勝手に誤解してるだけ。何度誤解を解こうとしても、全然信じてくれないの。あたしが好きなのは・・・」


そう言い、切なそうに千郷はタクに視線を向ける。

そんな千郷の様子に、千郷の言葉の続きが安易に想像出来た。

千郷が本当に好きなのは、タクだ。

よりによって、好きな人に・・・

そんな千郷が、とても不憫に思えた。

あたしは呆れ、小さな笑みを零す。


「トイレ、行ってくる」


千郷は不貞腐れながら、その場を離れていく。

そんな千郷の背中に少し同情しながら、あたしは視線を戻す。

ふと視界に入った、カウンターの中に居る男。

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