恋する病棟、24時
恋の処方箋




お酒って怖いなって今更ながら実感したその夜。

仕事って忍耐だと思う。どれだけ辛いことがあっても泣かず悲しまず、前向きに頑張ろうという気に自分がならなくちゃやっていけない。
仕事もプライベートも充実している人なんて数が知れていると思うし、それこそ「前世でどれだけ徳積んだんだろー」と他人事のように感じるようになった。

そんな時にヤケクソで摂取するアルコールは格別なものがあるし、その場の勢いに任せて飲みすぎると見えてくる結果は一つ。

酔い潰れる。


「だからぁ〜、私ってそんなに要領いい方じゃないんれすよ〜」


私は片手にはビールのジョッキを掴んで居酒屋のテーブルに項垂れながらそんな愚痴を漏らしていた。


「怒られたらそりゃ悲しいし、失敗したら生きてる価値ないって思うし、そんな特別な人間じゃない私に一般人以上の成果を求められてもぉ」


朦朧とする意識の中、同僚たちの騒ぎ声が耳に届く。私のそんな戯言も掻き消されるような程の騒ぎっぷりだった。
しかし斜め前で私の話を聞いてくれているその男性はグラスに注がれた烏龍茶を飲みながらうんうんと頷いた。

体が熱い、口が勝手に動く。私はさっきから何を話しているんだろう。
誰に、話し掛けているんだろう。


「せめて、恋人がいればなぁ……」


溢れてしまった願望にその人がピクリと反応したように見えた。
せめてプライベートが充実していれば仕事が上手くいかなくたって余裕が生まれる気がするし、失敗しても恋人の慰めがあれば立ち直れる気がする。そんな存在が今の私にはいなかった。

何より恋人がいる人たちはみんな幸せそうだ。





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